あたかも夜這いの格好どぇ布団に入り込む黄色い三角のマークが点滅して何をしとるんだね君はと布団をめくりあげるは用心棒の右腕太くこんな腕で吸われたらハバナの葉巻もひとたまりもなくパナマの運河もくちとける御用だ御用ばさりと布の擦れる音、夜這いと思われた人影は夜這いの剥製で夜這いは夜這い中に夜這われて剥製となった模様昨日までの息遣いはいづこにとも思われど私とて蝋で出来た人形であるし夏場は厳し、これはひとまずは杯を合わせてげっぷをこぼし餅が焼けるのを待ちたいと思う。
何かが起こりそうだとその異変に気がついて初めてそのことを気がついてさらには気がついて気がついて気がついてついには「気がついたぞ!」と大きな言葉で黒板にも〈先生、気がつきました〉と書いては日直をさぼりゴミ箱を蹴飛ばして馴染みの牛の鼻の輪っかを暗記帳にして英単語を覚えていた、pot-au-feuでポトフ、ポトフはフランス語のよう、まあそんなことはどうだってよく、彼の気がついた異変は
・さっき干したはずの洗濯物がもう乾いているという異変
・独立した豆国家なる集団が早くも秋の到来をつげる
・埃の溜まり場で一休みしている時に感じた微かなる黴の臭い
:いつもの場所に猫がいなかった異変
:てんを合わせると7つなのに少し離れて見るとてんが何個あるか分からない視力の問題
等々、掲げられたのは彼が大きな問題だと感じた複数個だが細かい事例もあげるならばノートが何冊あっても足りやしないと彼の母親は彼の頭を撫でながら言った。
町の人ははじめ彼の意見を信じようとはしなかったばかりか、自分らが機械で出来た人間であるという事を否定しようともせずに相変わらずの木登り三昧で特にクヌギの木には多くのロボ達がよじ登り悲しくも折れてしまった枝もあれば外れてしまったネジも土に転がりやがて土にかえるのを今か今かと待ち構えていた。
しばらくすると立春、町は踊り子たちが多くの泥棒を働いて踊る子切れ味を無くすというスローガンは要領を得ずに、しかしながら商人達は何か対抗すべく手はないかと模索に模索、しかしながら踊り子たちのその華麗なる踊りには為す術もなく気付けば空っぽになった棚を発見しては膝から崩れ落ち陽気にフラダンスを踊っていた30秒前の自分を深く呪ったものである、そんな矢先に、踊り子の一人が物も取らずに暖炉にあたりながら、異変は確実に起こっている!とひとこと残し、何も燃えいない暖炉に飛び込んで、その後で、体育座りをして、目をはなしたすきにはもういなくなっていた。
何かが起こっている。
町の人々は少なからずそんなうわさ話を信じ始めた。信じれば人間なんだって信じられるもの。特にいい例題は浮かびはしないが、あんな事やこんな事も信じてしまう。その善し悪しは別として。
耳から耳へと目から目へと鼻から手へと唇から草原へと。何かが移動して町は大混乱、町人たちは憂鬱に、踊り子たちは不安に、山ねこは山をおり、そばかすは無くなった。
そして、来る日、
カラスが空を飛び、波はひきみち、朝はいつものようにやってきて、昼になり、日は暮れて、夜になった。
何も起こらなかった。
何も起こらなかったんだな。
みんなそのことに驚きもしなかったのは誰も何かが起こるだなんて思っていなかったからだ。
だからと言って、何も起きていないなんてことはあるはずもなく、今日も何かが起きているのであって、寝ていた人もたくさん寝たら起きるものだ。えっへん!
posted by 浜岡七十八郎 at 18:36| クアラルンプール ☁|
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